雲南省紅河哈尼(ハニ)族彝(イ)族自治州屏辺県湾塘小学校が2022年の調査で、「近視の児童が0人」であることが確認されたのに続いて、同省で今年、新たに2校で、「近視の児童が0人」であることが確認された。それは、普洱(プーアル)市孟連傣(タイ)族拉祜(ラフ)族佤(ワ)族自治県の腊福小学校と、戈的小学校だ。同2校に通う児童は323人で、近視が0人であるだけでなく、全児童の視力が1.0以上だった。
雲南省の小学校3校で、近視率「0」の奇跡が生まれたのは、高価なマルチメディアデバイスや、ハイテクが駆使されたからではなく、主に児童が毎日3時間以上屋外で運動しているからだ。
これらの学校には、朝のジョギングや休み時間、体育の授業、課外活動などがたくさん設けられており、児童は木々が茂る山や林、野原などを駆け回ったり、そこで遊んだりしているため、目が自然光を浴びる時間が長い。戈的小学校の校長は、「子供の目を輝かせるためには、屋外で過ごしてもらうのが一番」と話す。
生き生きした目をしている「近視の児童0人」の小学校の児童(撮影・陳欣波)。
医学研究では、1日2時間以上、屋外で運動するというのが、青少年の近視を予防する最も効果的な方法の一つであることが分かっている。それは、自然光が網膜でドーパミンの分泌を促し、眼軸長の伸長を効果的に抑えるからだ。眼軸長の伸長は、近視の主な原因となる。しかし、その無料の「良薬」は今の社会において、あまり使われることがなくなっている。学校は安全上の心配から、保護者は成績への重視から、子供が屋外で過ごす時間を減らしており、教育を重視すればするほど、目が悪くなるという悪循環に陥っている。
このように子供たちの近視率が高止まりしていることを懸念しながらも、視力を守ることができる時間を、子供たちから奪っているというのが現状だ。屋外で運動の時間を十分に取るというのは、簡単に見えるものの、今の教育の現状を見ると、それが欠落している。
休み時間に運動場を走る腊福小学校の児童(写真上)。竹馬で遊ぶ戈的小学校の児童(写真下、撮影・陳欣波)。
腊福小学校の校長の「よく運動をすることに悪いことは何もない。子供の身心の健康と正しい『三観』(人生観・世界観・価値観)は最も重要で、視力がいいことは人生においてとても大切なこと。それは、美しい世界を見るために必要なことで、テストの答えを間違えたり、成績が悪かったりというのはそれほど重要なことではない」という言葉には、とても考えさせられる。
3校は、辺鄙な少数民族が集まる地域にあり、経済発展も教育資源も都市部の学校とは比べ物にならないことは否定できないものの、一見不利に思える環境において、逆に、自然との繋がりを保つという、教育の本来あるべき姿が残されていると言える。放課後、児童らは電子機器で遊ぶわけではなく、運動や畑仕事を手伝ったりしている。この地の子供たちの世界は教科書や宿題だけでなく、自然の美しい山、青空、畑仕事などがあるのだ。運動や労働を通して、子供たちは強健な体を作ることができるほか、電子機器を使う時間が少ないため、目を保護することができ、さらに、責任感や自分のことを自分でする能力、協力の精神、自然を愛する心なども育てることができている。
「近視の児童0人」の小学校3校は鏡のようで、「教育の成果は、成績だけでなく、子供たちの生き生きとした目にも現れる」ということを私たちに教えてくれている。優れた教育というのは、たくさんのお金が必要であるものではなく、常識と自然に回帰し、子供たちが本来の姿に戻れるようにすることを意味するのかもしれない。(編集KN)
「人民網日本語版」2025年9月24日