病院で手続きをサポートする「付き添いサービス」提供者(写真提供・優護万家のWeChat公式アカウント)。
通院に付き添ったり、身辺の世話をしたり、付き添いカメラマンをしたり、内装の購入に付き添ったりと、中国では今、多種多様な「付き添いサービス」が登場している。こうしたサービスは市場化と社会化といったスタイルで提供されており、人々にとっては、何かに付き添ってくれる人を気軽に見つけることができるようになっているほか、「借りができる」という心理的負担を避けることもでき、多様化するさまざまなニーズが満たされるようになっている。
中国で「付き添い経済」が台頭しているのは、社会的背景と深い関係がある。まず、人々の移動範囲が広くなり、自分は北方エリアに住んでいるのに、家族や友人は南方エリアにいるというケースや、自分は都市部に住んでいるのに、家族や友人は農村部にいるというケースが、ごく普通のことになっている。そして、さまざまなシーンに対応する「付き添いサービス」の社会化が急務となっている。また、若い消費者は、自分の気持ちを非常に大切にし、情緒的価値を満たすことを追求し、さらにオーダーメイドで、プロフェッショナルな「付き添い体験」のために喜んで財布のひもを緩めるようになっている。市場ロジックを通して、家庭構造や社会の変化が原因でできた「穴」を埋めるというのが、「付き添い経済」の価値となっている。
一人暮らしの高齢者と一緒に春節(旧正月)用品を買うために街を歩く浙江省寧波市霞浦街道(エリア)のボランティア(2025年1月27日撮影・葉正威)。
現時点で、「付き添い経済」は提供する人の自発性頼りで、サービスのレベルも、提供者の素養にかかっているため、盲盒(ブラインドボックス)を開けるようなものだ。そのため、「付き添い経済」を確実に発展させるため、その規範化の推進を求める声がますます高まっている。一部の機関は、サービス標準の細分化やサービスの流れの規範化などを模索している。例えば、中国社会福利・介護サービス協会がサービスプラットフォームを含む22機関と共同で発表した「高齢者の通院付き添いサービス規範」は、サービスの流れや安全規則、クレームメカニズムなどを規定している。また、一部の介護サービス機関も、通院付き添いサービスの全行程における標準を制定することを模索している。また、デジタル化プラットフォームを通してリアルタイムで追跡したり、サービスを評価したりできるようにしている機関もある。供給のクオリティ向上に尽力し、優れたサービスエコロジカルを構築することで、「付き添い経済」が継続的、かつ健全に発展するよう促進することができる。
「付き添い」というのは、人と人の繋がりで、安定感やぬくもりが求められる。付き添いサービス提供は、心からの感情移入と積極的な関心をベースにし、人間的な配慮をサービスに組み込まなければならない。通院付き添いサービス業務に従事して10年になるというある男性は、「いつでも使えるように、ティッシュペーパーを常に携帯している。こうした細やかなサービスは、治療を受ける過程と同じくらい重要だ」とする。また、合理的な線引きをして、距離を保つことも必要で、そうすることで、安全やプライバシーにおけるガードを設置することができ、より良い形で情緒的価値を満たし、良い評判につながり、市場のポテンシャルを掘り起こすことができるとしている。
マラソン大会開始前に、ランナーの足をマッサージする伴走者(写真提供・銭江晩報)。
中国において世帯の小規模化と高齢化が加速するにつれて、「付き添い経済」がさらに重要な役割を果たすことになりそうだ。問題が発生した時に助けを求めたり、同じ趣味を持つ人を探したり、孤独を感じた時に社会に繋がりを求めたりといった感情的ニーズと生活上のニーズが高まっており、こうした新業態のポテンシャルも大きくなっている。
中国において「付き添い経済」が台頭していることは、今の人々の生活の質に対するこだわりがより高まっていることのほか、新たな変化に適時対応する社会サービスの大きな活力を反映している。ある機関は、今年、中国の「付き添い経済」の市場規模は500億元(1元は約21.2円)に達すると予想している。中国では今、より多くの人が、基本的な公共サービスだけでなく、プロフェッショナルで、規範化され、すぐに利用できる社会サービスのためにお金を払う能力と意思を持つようになっている。それは、人々の変化に対応しようとする積極的な姿勢であり、市場経済の必然的な結果でもある。(編集KN)
「人民網日本語版」2025年10月15日