
五台山山頂にある地質年代の寒冷な気候の中で物理的風化によってできた「牛心石」(撮影・楊国軍)。
山西省と河北省の境界に位置する五台山は、国家級風景名勝区、国家5A級景勝地、世界遺産などいくつもの「肩書き」を持ち、地質学的な奇観の殿堂であり、山紫水明の秘境でもあり、さらには中国仏教四大名山の第一の山として奥深い禅の精神を宿す場所でもある。
先カンブリア時代の地層の比較ができる標準的エリアとして、五台山は「地球の進化の生きた化石」と呼ばれる。何億万年もの地殻変動によりしっかりした山脊が形成され、片麻岩や花崗岩は地球の秘密を解き明かすカギを記録し、氷河によって形成されたそびえ立つ峰々やU字形のくぼ地といった独特の地形が生まれた。この600平方キロメートルに及ぶ地質公園には、重要な地質断面が10ヶ所、観察スポットが約60ヶ所があり、三次元の立体な地形により、華北地域の地質の進化の過程を描き出している。

五台山に生息する動物たち(撮影・楊国軍)。
山紫水明の美しい景色によって格好の避暑地となっている五台山は、7月の平均気温がわずか13-17度となっており、森林率は43%に達する。滹沱河や清水河は五台山を潤し、至る所に泉や池を作りだし、般若泉などはミネラルを豊富に含む「神の泉・仏の水」としてすっきりとした甘みの水として知られている。五台山は動植物の楽園でもあり、ヒョウやミミキジなどの珍しい動物が生息し、山麓の夏緑林から山頂の高山の草地まで、590種類以上の植物が緑色の絵巻を描き出している。

五台山の森林の植生(撮影・楊国軍)。
また5つの台状の峰(台頂)が五台山の魂とされている。北台の葉斗峰は標高3061メートル、華北の頂と呼ばれ、「寒気が厳しく夏でも雪が舞う」奇観とたたえられている。東台の望海峰の雲海に昇る朝日、西台の掛月峰に浮かぶ月の美しさは、地上の山水と天上の気象・天文の絶妙な組み合わせとなる。南台の錦繍峰は夏には大地に花が咲き乱れ、秋には木々の葉がカラフルに色づく。そして中台の翠岩峰は東西南北4台の頂がここから生まれたとされる「山脈発祥の地」であり、牧草が青々と茂り、そこかしこに泉が湧く。

高山の草地(撮影・楊国軍)。
南梁溝と駝溝には原始的な美しさが詰まっている。南梁溝にある590種類あまりの植物のうち、約100種類はとりわけ珍しい「仏教の聖木・沙羅樹」類で、40種類あまりの獣類、140種類あまりの鳥類もここで繁殖し生息する。駝梁は観光地「太行緑宝石」で知られ、亜高山の草地を望めばキンレンカが野山を埋め尽くし、峡谷の高所から水が流れ落ちる「飛瀑」や原始の姿をとどめた森林が桃源郷のような理想郷となっている。

南梁溝に広がる景色(撮影・楊国軍)。
地質学的な奇観から山紫水明の素晴らしい景色まで、仏教の聖地から生態環境の楽園まで、五台山は自然の素晴らしさと人間の文化的な営みが完全に融合した場所だ。五台山では、大地が伝えるこの世の移り変わりの物語を聞くことができ、禅の世界の静けさと奥深さを感じることができ、山と水の美しい情景の中で心を落ち着ける場所を見つけられるとともに、自分の心に備わるパワーを感じることもできる。(編集KS)
「人民網日本語版」2025年11月7日