
(イラストは生成AIで作成)
中国の若者の間で最近、「レンガを育てる」ことが流行している。ソーシャルメディアを見ると、1日に2-3回レンガに水をかけて、苔が少し生え、それが少しずつ増えていく様子を記録している人もいる。1年ほど育てたレンガに苔が一面に広がり、小さな黄色い花も咲き、シダ植物まで生えてきたという人もおり、どんな状態になっていくかは自然任せという意味で「自然のブラインドボックス」と呼ばれている。この一見「無意味」にも思える趣味が、中国の若者の心に刺さっているのはなぜなのだろうか?経済日報が伝えた。
「レンガを育てる」ことの最大の魅力はハードルの低さだ。道路脇や川辺で穴が開いたりひびが入ったりした古いレンガを拾い、水に24時間浸ける。そして、使い捨て容器を受け皿にして、1日に2-3回水をかけ、後は放置しておけばいい。
業界関係者によると、苔の胞子は空気中を漂っており、環境が適さない場所では休眠し、湿度や気温が適した環境で再び成長を始める。ザラザラしているレンガの表面は水分や塵などがたまりやすく、胞子にとっては発芽する絶好の環境となる。言い方を変えれば、レンガで「苔が枯れてしまう」ということはほぼないということだ。水をかけるのを忘れると苔は「休眠」し、また思い出して水をかけると青々と生長する。
「レンガを育てる」ことが与えてくれるのは、まさに「情緒的価値」だ。「レンガを育てる」ようになって1年以上になるという北京の連悦岐さんは取材に対して、「レンガに緑の苔が生えてきた時に感じる達成感は、ものすごく時間をかけて一つのプロジェクトを終わらせた時に劣らない」と話した。「レンガを育てる」人の多くが、「目的がない感じが魅力」としている。結果を追い求めることも、誰かに何かを説明したりする必要もなく、苔が生えてくればうれしいし、生えてこなくても問題はない。
「レンガを育てる」ことが若者の間で人気となっていることは、気持ちのはけ口を探している人が多い現状を反映している。中国のリサーチ企業・艾媒咨詢(iiMedia Research)の統計によると、都市で生活する若者の60%が長期間にわたって不安やストレスを抱えている。首都医科大学附属北京朝陽病院神経科の魯明教学主任兼主任医師は、「『レンガを育てる』ことは、実際の価値があるかないかに関わらず、情緒的価値を与えてくれる。レンガに少しの変化が現れるたびに、ドーパミンを含む神経伝達物質が分泌され、幸せを感じることができる」と説明する。
若者が「自分の感情」のために財布のひもを緩めることは、もはや新鮮味のあることではなくなっている。しかし、エモ消費には課題も存在している。中国社会科学院社会学研究所研究員で消費・文化社会学研究室主任の朱迪氏は、「エモ消費のマーケティングは、消費者の共鳴を呼びやすい。特に、消費者がストレスを感じている時は、衝動買いしたり、買い過ぎたりしやすい」と分析する。統計によると、調査に答えた若者の50.31%が「エモ消費業界ではマーケティングで謳っている価値が実際の価値を上回っている」と感じ、約半数が「利用後、虚しさが増す」と感じていた。
「レンガを育てる」ことは、お金がかかるエモ消費と異なり、情緒的価値があるのにお金はほとんどかからない。色々なものを比べた結果、若者は、本当に情緒的価値があるものは何なのか、マーケティングによって作られた情緒的価値とは何なのかを理解するようになっている。(編集KN)
「人民網日本語版」2026年10月28日