うp主である「@池早是我」さん(以下、池早さん)は、四川省成都市出身の95後(1995年から1999年生まれ)の女性だ。今年初めに仕事を辞めてから「職業体験師」になり、半年間ですでにデリバリー配達員やプライベートコンシェルジュ、茶館の店員など30種類の仕事を体験した。こうした経歴が話題になり、ネット上で600万人を超えるフォロワーを獲得し、フォロワーの視野を広げただけでなく、彼女自身も考え方が変わったという。
「小さい頃からドキュメンタリーが好きで、特に人文系と社会科学系のものが好きで、いろいろな人がそれぞれ異なる生活をしているのを見たり、さまざまな文化的ストーリーを理解したりするのが好きだった」と話す池早さんだが、働き始めてからは家と職場を往復するだけの毎日で、ある動画を見るまでは世界に対する好奇心を徐々に失っていたという。それは「給料のことを考えないとしたら、一番やってみたい仕事は何か?」と問いかける動画で、視聴した池早さんの頭の中には無数の答えが次々に浮かんだという。マスメディア業界で働いていた池早さんは、熟慮した上で仕事を辞め、100種類の職業を体験するチャレンジに乗り出し、そのプロセスを動画で発信することにした。
最初はインターネットでの求人に応募し、採用される前に「自分は体験として働くだけで、事前の研修以外には1日しか出勤しない」と告げ、「動画を撮ってネットで発信する」ことも伝えた。池早さんの行動に当惑する企業は多く、拒否されることもしばしばだった。その頃の「体験式就職の成功率はわずか5%」だったが、ネットで話題になってからはその成功率がうなぎ上りとなり、今では企業から「ぜひうちに来て仕事を体験してほしい」という依頼が引きも切らないという。
川劇の劇場で観客の情熱に感激 観客20人でチケット売上40枚
川劇の舞台にちょっと出るだけのために、池早さんはまるまる1ヶ月以上も練習を重ねた。これは池早さんが職業体験を始めてから最も長い「事前研修」になった。就職したのは民間の小劇団で、劇団員のほとんどが小さい頃から川劇に惚れ込んで練習を重ねてきた人たちだった。
池早さんは、「花旦(若い女性役)を体験した中で、最も印象深かったのは花旦という役そのものではなく、人々の情熱だった。劇団員も観客も、川劇から伝わるあの情熱は、これまでのどの職業でも感じたことがないものだった。劇団には1ヶ月ほどいたが、大勢の高齢の観客が毎日芝居を観に来ること、芝居は午後始まるが、観客はお昼には劇場に来ることに気づいた。川劇のレパートリーはそれほど多くないので、何度も観に来ている高齢者はとっくの昔に、すらすらそらんじることができるほど同じ演目を繰り返し観ているが、飽きることなく、『観れば観るほど味わい深い』と話していた」と振り返った。
劇団の経営状況はたびたび困難に見舞われていたものの、観客達は何も言わずにそっと支援をしていた。ある雨の日には、20人ほどの高齢者が傘をさしながら芝居を観ていた。そして芝居が跳ねた後に確認するとチケットの売り上げは40枚以上だった。「チケットの売り上げが観客数より多いのは、ここではいつものこと」と池早さん。
半年間で感じた色々なこと 次の仕事は警備員
池早さんの再生回数が最も多い動画は、茶館で働いた時のものだ。茶館はそれほど大きくなく、毎日の掃除のほか、水を汲み、練炭で湯を沸かし、客を迎えるのが池早さんの仕事だった。その町の高齢者にとって、茶館にやって来て茶を飲むことはすでに数十年間変わらない日常の一コマとなっている。
その茶館で十数年働いている七さんは、幼い頃病気にかかり、その際間違った薬を服用したことで、知能の発達が遅れてしまい、両親が亡くなった後は茶館のオーナーが彼を引き取って面倒を見ていた。七さんも茶館の仕事をしっかりこなすことで、誇りを感じている。知能レベルは子どものままだが、七さんは誰よりも満ち足りて楽しく暮らしており、ピュアで誠実だ。池早さんは、「仕事の本質というものは、一方的な奉仕ではなく、一人一人が自分のやり方で、人から尊重を得ること」としている。
消防隊員や花旦、茶館の店員、デリバリー配達員、豪邸のコンシェルジュ、タレントのアシスタント、ネットカフェの管理者など、半年間で多くの職業を体験した池早さんは、「自分にも大きな変化があった」と心の内を語り、「異なる人生を送る人と束の間のふれあいをし、その人たちのストーリーを理解したことで、どの職業にも人知れぬ苦労があることがわかった。人がなぜストレスを感じるのか、なぜ不安になるのかもよく理解できるようになった。これまでの経験が私に世界のこと、人生のことをよりじっくり考える可能性を与えてくれた」としている。
池早さんは、「自分が職業を選択する時には一定の傾向というものがあり、自分がぜひやってみたい仕事を選ぶこともあれば、ネットユーザーが見たがる仕事を選ぶ時もあり、一連の依頼を受けて選ぶ仕事もある。次の仕事はもう決まっていて、警備員をすることになっている。ネットのコメント欄によると大勢のユーザーが警備員の仕事がどんなものか見たがっている」とした。(編集KS)
「人民網日本語版」2023年10月12日