中国で新エネルギーを中心とした新型電力システムの構築が加速するにつれ、新型エネルギー貯蔵技術が多様な発展を遂げ、バージョンアップを重ね、応用市場も絶えず開拓されて、産業のビジネスエコシステムがほぼ形成された。今年上半期(1-6月)の設備容量の規模は過去の設備容量の合計に相当する。
世界でエネルギーのモデル転換が進む大きな流れの中、新型エネルギー貯蔵は今やテストやモデルの段階から大規模な商用化に向かい、急速に発展する黄金期を迎えようとしている。
新型エネルギー貯蔵とは何か?
新型エネルギー貯蔵は揚水によるエネルギー貯蔵以外の、電力供給(出力)を主要な形態とするエネルギー貯蔵技術を指す。新エネルギーを中心とした新型電力システムを構築するための重要な支えであり、新型リチウムイオン電池、フロー電池、圧縮空気エネルギー貯蔵、機械的エネルギー貯蔵などが含まれる。
業界関係者によると、従来の揚水によるエネルギー貯蔵に比べ、新型エネルギー貯蔵には、建設期間が短い、立地を柔軟に選択できる、反応が早い、調節能力が高いなどの優位性が備わっている。中国でエネルギーのグリーン・低炭素化へのモデル転換が持続的に推進されるのにともない、新エネルギー発電量の比率が上昇し続け、新型エネルギー貯蔵に対する電力システムのニーズがますます高まった。
応用シーンが絶えず広がる
江蘇省蘇州市にある常台高速道路の白洋湖サービスエリアでは、250平方メートルのカーポートの上部に設置された96ブロックある550ワット太陽光発電ユニットが太陽の下でまぶしい光を放ち、グリーン電力エネルギーを絶えず生み出しており、年間の発電量は5万3000キロワット時(kWh)に達する。カーポートには、新エネルギー自動車が充電するために次々にやって来る。充電速度が最速の状態なら「1秒の充電で1キロメートル走れる」という。
ここは協鑫集団と蘇州交通投資集団が連携して打ち出した、江蘇省高速道路サービスエリアで初の「光貯充(太陽光発電・エネルギー貯蔵・エネルギー充電)一体化」充電ステーション。一度に新エネ車20台が充電を行うことができ、通年で新エネ車10万台にサービスを提供することが可能だ。
張家港協鑫超能雲動公司の郝三存社長は、「光貯充一体化エネルギー管理システムでは、充電ステーションのエネルギー貯蔵システムがカーポートの太陽光発電で生まれたグリーン電力を効果的に蓄えることができる。オフピーク時間を利用して蓄電し、ピーク時間帯には電気自動車(EV)に電力を供給して、スマートピークカットを行い、充電効率のブレを抑えることが可能だ」と説明する。
充電・電池交換ステーションから工業・商業へ、さらには新エネルギーステーションへ、そして電力ネットワークのピークカット・ピークシフトへ、中国の新型エネルギー貯蔵技術は多様な発展を遂げ、応用シーンが絶えず広がりを見せている。現在、中国のリチウムイオン電池、圧縮空気エネルギー貯蔵などの技術は世界のトップレベルだ。そのうちリチウムイオン電池は、商用化されてからエネルギー密度が5倍近くになり、サイクル回数は1万2000回を超えた。
新型エネルギー貯蔵が大規模商用化の段階へ
中国化学・物理電源業界協会エネルギー貯蔵応用分科会が発表した「新型エネルギー貯蔵産業発展報告」によると、今年6月末現在、全国における新型エネルギー貯蔵の建設中・稼働中の設備の容量は累計1733万kW/3580万kWhを超えた。今年1-6月だけで、新たに投入された設備の容量は863万kW/1772万kWhとなっており、これは過去の設備容量の合計に相当する。
中国能源建設股份有限公司の宋海良会長は、「新型エネルギー貯蔵は、高比率の新エネルギー電力システムを構築する破壊的イノベーションであり、エネルギー革命の流れに促されて大きく前進し、今まさにテストやモデルの段階から大規模な商用化へ向かっており、急速発展の黄金期を迎えた」との見方を示した。
1兆元級市場が誕生
興儲世紀科技股份有限公司の劉継茂社長補佐は、「2022年に、世界で新たに投入された電気エネルギー貯蔵プロジェクトの設備容量の規模は前年同期比98%増の30.7ギガワット(GW)に達した。予想では、2025年の世界の電気化学反応に基づくエネルギー貯蔵の市場規模は100GWhを超え、2030年は世界で累計250GWhに達する見込みだ。新エネルギーの風力発電、太陽光発電の10%の割当てで計算すると、世界のエネルギー貯蔵市場は1兆元(1元は約20.8円)規模に達し、新型エネルギー貯蔵が競争の中心になるだろう」と述べた。
現在、中国では新型エネルギー貯蔵産業のビジネスエコシステムがほぼ形成されている。22年には関連企業が3万8000社に達し、リチウムイオン電池によるエネルギー貯蔵産業チェーンの付加価値額は2000億元に迫った。目下のところ、福建省、広東省、四川省などの地域でエネルギー貯蔵分野の先進製造業クラスターが急速に発展しつつあり、リチウムイオン電池の分野で複数のリーディングカンパニーが生まれており、「専精特新(専門化・精密化・特徴化・新規性)」の小巨人企業(高い成長性または大きい発展のポテンシャルを持つテクノロジーイノベーション中小企業)も200社以上育成された。
中関村エネルギー貯蔵産業技術連盟(CNESA)の理事長で中国エネルギー研究会エネルギー貯蔵専門委員会の代表委員を務める陳海生氏は、「今年は新型エネルギー貯蔵の新たに増加する設備容量が15GWから20GWに達するだろう」と予測している。(人民網日本語版論説員)
「人民網日本語版」2023年11月22日