人民網の取材に応じる中日笹川医学奨学金制度の第38期、40期の研究者・孫長博医師(撮影・蒋暁辰)。
中国国家衛生健康委員会と日本財団が共同で主催する「中日笹川医学奨学金制度35周年記念式典」が今年7月、北京人民大会堂で開催された。同制度の第38期、40期の研究者で、現在、同済大学附属上海市肺科病院・胸部外科の医師である孫長博医師がこのほど、人民網の取材に応じ、中日笹川医学奨学金制度を通じた日本における交流の経験と収獲について語った。人民網が報じた。
孫医師は、2022年に東京大学医学部で博士号の学位を取得し、今は帰国して同済大学附属上海市肺科病院胸部外科の医師として活躍しているほか、上海市肺移植工程技術センターの陳昶教授のチームにも属し、主に肺移植や肺がんの治療と研究に従事している。
孫医師は、自身の学術のキャリアを振り返り、恩師数人に対する深い感謝の念を語った。2015年、大学院の指導教官だった中国医科大学附属第一病院の許順教授の推薦とサポートの下、孫医師は書類審査と面接を経て、第38期笹川医学奨学金の対象となり、2016年から東京大学附属病院呼吸器外科で1年間の臨床研修に参加した。その期間中、研究室の佐藤雅昭教授の励ましもあり、孫医師は引き続き同分野で研究を重ねたいと考えるようになったという。そして、2017年に、東京大学の博士課程入学試験に合格した孫医師は2018 年に、中日笹川医学奨学金(博士)の支援の下、東京大学医学部の呼吸器外科腫瘍免疫学を専門に学ぶ大学院生となり、2022年に博士号の学位を取得した。
孫医師は、「海外で勉強と交流したのはそれが初めてのことで、初めは不安で気が気でなかった」と振り返る。ただ、幸運なことに、孫医師の博士課程の指導教員で、同じく海外留学の経験を持つ中島淳教授が、留学生の気持ちをよく理解してくれ、生活や勉強の面で、しっかりとサポートしてくれたという。また、笹川医学奨学金が経済的なサポートをしてくれたため、研究に打ち込むこともできたほか、同制度に協力している日中医学協会が交流会を定期的に開催し、制度対象者の研究の進展や生活上の問題などを把握して、適時解決できるよう助けてくれたため、生活から学業に至るさまざまな面で全方位的で立体的なサポートを得ることができたという。
また、笹川医学奨学金制度を通じた日本における学習と交流の収穫について、孫医師は、「私にとって、さらに高いレベルの学術研究の分野へと繋がる扉を開け、世界を探る勇気を与えてくれたのが最大の助けだ。ある意味、私の人生の方向性が変わったと言える」と感慨深く語る。
博士号を取得して帰国した後、孫医師は引き続き日中医学協会や、研究者の同窓会組織「笹川医学奨学金進修生同学会」のサポートの下、活動と研究を展開している。笹川医学奨学金進修生同学会は無料診療や学術交流、医療技術実践トレーニングといった活動を定期的に企画し、同制度の元対象者のために、学術交流プラットホームを構築している。孫医師は、「それにより、みんな帰属感を強く感じることができている。笹川医学奨学金は短期的なプロジェクトではなく、持続性と伝承性を備えている」との見方を示す。
今年7月に人民大会堂で「中日笹川医学奨学金制度35周年記念式典」に参加した孫医師は、「中国と海外の組織・機関が医療の分野で実施するハイレベルな協力としては、最も長く、人員規模が最大の二国間プロジェクトである笹川医学奨学金は、中国と日本の医療衛生交流と協力を継続的に深化させ、両国の国民の健康福祉と両国関係の発展を促進するうえで、重要な役割を果たしている」と語った。
また、臨床医の観点から、中日両国の医療衛生の分野のそれぞれの優位性を説明し、「日本は臨床データを非常に細かく研究し、提供されている医療サービスの水準は非常に高い。一方、中国は、膨大なデータを有し、短期間で、有意義な臨床研究成果を挙げることができる。そのため、両国は多施設国際共同臨床研究を積極的に展開し、優位性を相互補完し、共に進歩していくべきだ」との見方を示す。
1986年に始まった中日笹川医学奨学金制度を通して、これまでに約2400人の医療関係者が日本において学習と交流を行い、中国の衛生事業発展に多大な貢献を果たしてきた。近年、中国の医療衛生レベルが高まり続けているのを背景に、笹川医学奨学金は、学位取得コースやポストドクターコース、共同研究といった新たなコースを設置し、青年研究者が日本においての最先端の医療技術や知識を修得すると同時に、教授を対象としたハイレベルな共同研究を展開するよう奨励している。孫医師は今後、中日交流の架け橋として、中日の医学・衛生の分野の交流、協力を積極的に促進し、中日の医療・衛生事業の発展に貢献したいとした。(編集KN)
「人民網日本語版」2023年12月19日