乳釘紋銅製爵(二里頭夏都遺跡博物館所蔵)
爵は古代の酒器で、中国にしかない独特の形をしている。丸形の乳釘紋は青銅器の装飾の文様としては最もシンプルなもので、この乳釘紋の銅製の爵は「中華第一爵」と呼ばれており、中国でこれまでに発見された青銅器の中で最も古い時代のものだ。
中国の青銅器鋳造の歴史は5700年前の西北地域にさかのぼることができるが、当時の鋳造技術は水準が低く、銅刀など簡単な器物しか製作することができなかった。そのため、初期の酒器は陶土で作られたものがほとんどだった。2500年前になると、河南省洛陽市の二里頭にいた人々が先進的な「複合範(合わせ鋳型)」技術を生み出し、いくつかの型を合わせて鋳造するようになり、より大きくて複雑な青銅器を製造することが可能になった。この乳釘紋青銅爵は、同技術が使用された早期代表作の1つとされている。表面にある少し盛り上がったような線は、鋳型と鋳型のつなぎ目の跡だ。この線があることで、二里頭の時期、中国にはすでに世界トップレベルの青銅鋳造技術があったことがわかる。
夏の時代、飲酒は貴族の特権であったため、貴金属である青銅製の爵はごく自然に身分や地位を示す祭器となった。古代の爵禄制では貴族の身分に応じて与えられる爵が決まっており、現代中国語の「爵位」や「加官晋爵(官位や爵位が昇格すること)」という言葉はこの古代の酒器に起源がある。(編集KS)
中国の文化財は語る
博物館は人類文明を保護し、伝承する重要な場。博物館に所蔵されている文化財は埃をかぶった骨董品ではなく、いずれも民族の生きてきた証となる生きた伝承だ。「中国の文化財は語る」では毎回博物館に所蔵されている文化財の紹介を通じて、文化財に込められた中国の文化と精神について紹介していく。
「人民網日本語版」2024年2月27日