中国の研究チームは25日付の英国の学術誌「ネイチャー・メディシン」のオンライン版に論文を発表し、世界で初めて遺伝子編集したブタの肺を脳死状態の患者に移植することに成功したと報告した。この成果は、肺移植のドナー不足を緩和する可能性があるとして、国際的な専門家から「この分野における画期的な一歩」と高く評価されている。新華社が伝えた。
広州医科大学付属第一病院の何建行教授が率いる研究チームは、遺伝子編集を施した巴馬香豚(広西特産の豚)の左肺を脳死患者に移植し、臨床で一般的な単肺移植手術をシミュレートした。このドナーブタは6か所の遺伝子を編集することで、人体移植後の免疫リスクを低減。手術後の呼吸・血液・画像モニタリングの結果、移植肺は9日間にわたり換気とガス交換機能を維持し、その間、超急性拒絶反応は発生せず、病原学的監視でも活発な感染は認められなかった。

広西壮(チワン)族自治区河池市巴馬県の「巴馬香豚原産地保護拠点」で飼育されている巴馬香豚。撮影提供:新華社
何教授は取材に対し、「世界的に臓器移植の需要は年々高まっており、異種移植はドナー不足を解決する有望な方法とみられている。この成果は異種肺移植の分野で重要な一歩を踏み出したことを意味する」と語る。
そして、「今後は、遺伝子編集戦略と拒絶反応抑制治療の最適化を進め、移植臓器の生存と機能維持期間をさらに延長させる方針だ。また、チームが独自に開発した無管技術を異種肺移植の実験に導入し、人工換気によるドナー肺への損傷を軽減することで、異種肺移植の臨床応用への実用化を目指す」とした。
研究チームによると、この研究計画は国の関連法規・倫理規定を厳格に順守し、病院の倫理委員会など複数の機関の審査と監督を経て実施された。被験者は重度の頭部外傷を負い、複数回の独立した評価で脳死と判定。医学の進歩を支援したいという遺族の意向で、無償で研究に参加することに同意した。研究は9日目、家族の希望により終了した。
動物の臓器を人に移植する異種移植は、世界の医学研究の最前線分野であり、今回の成果は国際的にも大きな注目を集めた。スペイン国立臓器移植機関のベアトリス・ドミンゲス=ヒル長官は、「これまでの異種移植の試験は腎臓、心臓、肝臓に限られていた。肺は生理的なバランスが繊細で、大量の血流を受け、常に外気にさらされるため、特に損傷を受けやすいからだ」と指摘。そして、「中国チームの成果は、関連研究分野における画期的な一歩だ」と評価した。(編集YF)
「人民網日本語版」2025年8月26日