河北省涿州市出身の魏粼涛さん(38)にとって、今月1日は、長く、気が気でない1日となった。魏さんがカスタマーサービスの責任者を務めるオンライン書店「中図網」の倉庫センターが水没し、保管していた書籍のほとんどが水に浸かってしまったからだ。新華社が報じた。
「中図網」は、中国で最も初期に立ち上げられたオンライン書店の一つで、2018年に涿州市の倉庫センターを設置した。敷地面積2万平方メートルの倉庫には約400万冊の書籍が保管されていた。
台風5号(トクスリ)の影響で、北京市・天津市・河北省では7月29日から大雨が続いた。記録的な豪雨に加えて、あふれかえった上流の河川の水を「保水地区」に誘導する措置が取られたため、涿州市は水害対策において非常に難しい舵取りを迫られた。
8月5日、浸水被害を受けた河北省涿州市陽光大街にある中図網の倉庫センター。撮影・牟宇
魏さんは、「今月1日午後2時ごろに浸水が始まった。当社は事前に土嚢2000袋のほか、懐中電灯や合羽、長靴などを準備していた。しかし、水が倉庫のシャッターから侵入し、予想を上回るスピードで水位が上昇した。従業員は懸命に本を上の階に運んだが、午後4時半ごろに、どうすることもできなくなった。約60人が身動きが取れなくなり、水道もインターネットも、電気も止まってしまったため、とても不安だった。水深は最大3メートル以上に達し、1階は完全に水没した。2階まであと階段7段のところまで水が迫っていた」と振り返る。
救助隊が来たのは夜11頃。魏さんは翌日午前7時に倉庫から避難した。そして8時過ぎに、身動きが取れなくなっていた従業員全員が無事避難した。
魏さんは、「倉庫から避難した後、あんなにたくさんの本が水に浸かってしまったと思うと、みんな胸が痛んだ。400万冊以上あった本の約80%が水に浸かってしまった」と話す。
実は、今回の水害で被災した涿州市の企業は中図網だけではない。同市は出版業の物流中心地となっており、敷地面積約27ヘクタールの北京西南物流センター・涿州パークと周辺地域に、約100社の出版社や出版業者、出版流通企業の倉庫が集まっている。
中図網涿州倉庫センターが浸水被害を受けて5日目となった今月5日、水深は依然として1メートル以上あった。洪水に見舞われた同社は、既に洪水からの復活を期して自ら手を打ち、「頑張れ涿州!ブックセット」や「頑張れ涿州!文化クリエイティブグッズセット」などの販売を始めている。
魏さんによると、「頑張れ涿州!ブックセット」には、本4冊、金属製のしおり1枚、記念バッジ1個が入っている。本は、新たに仕入れた本がメインで、そこに浸水被害を免れた本を組み合わせている。水に浸かった本は絶対に入れていない」とした。
気象関連の科学知識普及の仕事をしている劉昊さん(36)は、涿州市の被害状況を見て心を痛め、「普段から読書が好きで、紙の本には思い入れがある」と話す。劉さんはネット上で「頑張れ涿州!ブックセット」が販売されるのを見て、迷うことなく購入したという。
ショッピングサイト・淘宝では、4日から「涿州の本特設コーナー」が緊急開設された。涿州市で被災した業者を対象に、販売に必要な費用を安くして、再起をサポートするのが狙いという。同特設コーナーに並んでいるのは、全て涿州市で今回被災した業者が在庫品の点検を行ってから販売しており、通常通りの販売が可能な書籍と関連商品ばかりとなっている。
多くのネットユーザーは淘宝で売られているこうした商品を購入して応援しており、中には「水に浸かってしまった本を買いたい」との声も寄せられている。
こうした応援キャンペーンに、魏さんは感動し、今後についても希望を抱いている。「水が完全に引いたら、清掃や消毒を行い、できるだけ早く営業を再開したい。『文化クリエイティブグッズファイトセット』の売上の10%を同業者の営業再開サポートに使い、共にこの困難を乗り越えていきたい」と魏さんは話す。(編集KN)
「人民網日本語版」2023年8月8日